
MTRについて超ざっくり解説。わかっているという方は読み飛ばしてください。
MTR = Multi Track Recorder マルチ・トラック・レコーダー
複数のトラックを持ったレコーダーという意味です。
CDやカセットテープはL/Rの2トラック構成ですが、MTRは4トラックや8トラックなどより多いトラック数を備えています。そして、そのトラック単位での録音や、再生時の音量、パン(左右の定位)設定が可能です。
4トラック構成の例では、1~4の各トラックに
のように録音して、それぞれのトラックの音量が再生時に調節することができます(現代ならこのような構成はあまりないかもしれませんが、4トラックカセットMTRの時代はけっこう一般的だったと思います)。
ベースが聞き取りにくい場合はベースの音量を上げればよいわけですし、ドラムがうるさいならドラムの音量を下げればよいわけです。
CDやカセットテープではL/Rの各トラックの音量やパンの調整はできません。また、当然ながら収録された楽器の各パートの音量を調節することもできません。出来上がった音をL/Rの2トラックに落とし込んだものだからです。
一方、MTRでは各パートの音量や定位を自由に設定して聞くことができます。ユーザーが好きなバランスで各パートの音を鳴らせるというわけです。
MTRは楽曲製作時に利用するものである、という言い方もできます。
MTRで満足のいくバランスができたら、それをCDやWAVファイルなどのステレオ音源に落としこむ=ミックスダウンすることで楽曲が完成するというわけです。
1のメリットはすぐわかるでしょう(同時に複数の楽器を演奏することは、無理とはいいませんが、非常に困難です)。ここでは2、3についてもう少し詳しく見ていくことにしましょう。
まずは、もう一度、ギター、ベース、ボーカル、ドラムの4パートのバンドの録音を考えてみます。
複数のパートを同時に録音したあとで各パートのバランスが調整できる
その昔、初期のレコードは1本のマイクの前に楽器の演奏者が並んで録音を行いました。各パートのバランスをとるのは非常に難しいものでした。各パートの音量は演奏時の強弱やマイクからの距離で調節するしかありませんでした。
その後、複数のマイクを立て、ミキサーでまとめるという手法が使えるようになりましたが、それでも各パートのバランスはいったん録音したものを聞いては調整するということを何度も繰り返すことが必要でした。録音時にバランスを決めなくてはならない。これは演奏者にとっても録音を行うエンジニアにとってもとても大きなかせとなりました。
しかし、MTRの登場で事態は一変します。各パートをそれぞれのトラックに個別に録音することで、録音したあとでどのようにもバランスが調整できるようになったからです。各トラックにそれなりの音量で録音できていればよいのです(大雑把にいえば、音が割れたりせず、極端に小さい音でなければOK)。
同時録音した際に、失敗したパートだけを録音し直すことができる
一発目のテイクの演奏が全体の演奏はとてもよかったのだけど、ギターが1箇所間違った。その後何度やり直しても最初のテイクよりいいものができない。
そんな場合でも、MTRで各トラックに個々のパートを録音してあれば、ギターパートのトラックだけを録音し直すだけで済みます。
さらにいえば、間違った部分だけを録音し直すだけで済むのです。
なお、曲の一部分のみを録音し直すことをパンチイン/パンチアウトと言います(録音開始位置がパンチイン、終了位置がパンチアウト)。
BR-800では手動で録音開始・停止を行うほか、あらかじめタイミングを指定しておくこともできます。詳細は別項を設ける予定です。